2009年1月18日日曜日

名作引用6

ボーンズ ゆらゆら帝国
彼女は決めた 強く誓った 今日から決して 年をとらない
白い光の中 何をするでもなく 耳を澄まして ただそこに居た
あの好きだった レコードを 聴きながら
時計の役目は 終わった 終わった
彼は気づいた いつでも蝿が 彼の周りを 飛んでいること
部屋の鏡の中 見慣れたその顔は 誰だか急に わからなくなる
まだ子供だった頃出会った闇のような
魔物が背中に現る 現る
あの好きだったレコードを聴きながら
時計の役目は終わった 終わった

表現者として死ぬとき、骨になるとき、人には二種類の傾向があると思う。ひとつは諦めてしまうこと、もうひとつは変わらないことである。その意味においてはこの歌詞における「今日から決して年をとらない」ことと「いつでも蝿が彼の周りを飛んでいる」ことはそれぞれその前者と後者に対応するだろう。前者の末路は「耳を澄ましてただそこに居る」ことであり「あの好きだったレコードを聴く」ことである。後者の末路は「見慣れたその顔が誰だか急にわからなくなる」ことであり「魔物が背中に現る」ことである。自分で言うのもなんだが、俺は表現をやめない。少なくとも今のところ辞めるつもりはない。すると気をつけるべきことは後者である。俺はちゃんと変わっているだろうか。少しでも前に進んでいるだろうか。そういったことを考えるのは常に必要である。そして背中に魔物が現れても、怖気ずに追い返すことである。表現をしている限りにおいて、不安は常に存在しなければならない。不安の存在しない表現は、自分を殺した表現である。誰でも自分の自信と不安に挟まれ、右往左往しながら進んでゆくのだ。ゆらゆら帝国は特異な文脈で出現してきたバンドである。この曲には本来彼らが伝えたかった虚無感と、表現をする上での右往左往が、つまっているのではないだろうか。

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